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創作ラジオドラマで、自我を持たないことの危うさに警鐘

Nコン神奈川県大会の創作ラジオドラマ部門1位を受賞

神奈川県立元石川高校3年 山田実和さん

全国の高校放送部が日頃の活動の成果を競う「NHK杯全国高校放送コンテスト」。神奈川県立元石川高校放送部で活躍する山田実和さんは、2024年神奈川県大会の創作ラジオドラマ部門で1位に輝きました。 

(2024年12月取材)

 

放送部では、年3回の大会での優勝を目指して活動

良い発声のために部のメンバー全員で筋トレも

 

―元石川高校の放送部の活動について教えてください。

 

一年生6人、三年生8人の少数精鋭で、放送部の大会での優勝を目指して活動しています。放送部の大会は、NHK杯全国高校放送コンテスト(以下Nコン)、高等学校総合文化祭、神奈川県高校放送アンデパンダン大会の3つあります。他にも体育祭の実況アナウンスや設営、学校説明会の司会など、学校行事に幅広く参加しています。

 

―コンテストにはどんな部門があるのでしょうか。山田さんはどのような分野に挑戦していますか。

 

コンテストには主に読みの部門と作品の部門があります。私は、創作ラジオドラマと朗読の部門に参加していました。また昨年の神奈川県高等学校総合文化祭では、放送情報部門にも参加し、情報部門の発表では教育長賞をいただきました。

 

―放送部の活動の中で、山田さんがほかに力を入れて取り組んでいることは何ですか。

 

毎週土曜日に部員全員で行う筋トレです。中学校時代も文化部だったので、とにかく体力がないので頑張っています。また、先生や部の仲間に作品を聞いてもらって意見を聞き、客観的にどう見えるかを意識するようにしています。

 

―筋トレ、意外でした! 発声などに重要なのでしょうか。

 

そうですね! 練習はラジオ体操から始めます。腹筋や体幹を鍛えると、安定した声が出せるそうです。柔軟体操もするのですが、体が柔らかいと声も出やすくなるらしいです。

 


家族の言動とネットの危うさが結びつき

ラジオドラマのテーマが誕生

 

―日々鍛錬した結果、2024年Nコンの神奈川県大会創作ラジオドラマ部門で1位に輝きましたね! 受賞の感想をお願いします。

 

今年はぜひ全国に行きたいと頑張っていたので、とても感激しました。でも1位を頂けたのは予想外だったのでとても驚きました。去年ギリギリ全国大会に行けなかったのがとても悔しかったので、最後の大会で結果を残せて嬉しかったです。

 

―受賞したのは、どんな作品ですか。

 

『化けの皮』というタイトルの作品です。あらすじは、「親友のトワが転校し、一人ぼっちの拓人(主人公)。ある日一人で下校していると、どこからともなくトワの声がする。声を辿りひたすら走り続けていると、気がつけば知らない場所の祭りに来ていた。そこには妖怪の仮装をした村人と狐の面を付けたトワがいた。トワの言動の節々に違和感を感じる拓人だったが、トワの言うことをただひたすらに信じて行動し続ける。その狐の仮面を付けた顔の見えない少年が、本当にトワなのか分からないというのに。そしてトワは……。」というものです。

 

―不思議な世界観の作品ですね。

 

「SNS被害と自我を持たないことへの警鐘」がテーマです。

あえて、作品にSNSを登場させたりSNS被害を直接想起させるような場面を作ったりせず、自我を持たないことの怖さが感じられる作品にしました。

 

『化けの皮』の脚本
『化けの皮』の脚本

 

―そのテーマを設定したきっかけや理由は何ですか。

 

家族で外出した際、「何が食べたい?」と聞かれても兄弟が「なんでもいい」としか言わなかったことです。自分で考えて決めようとしない態度に、私は「こんなふうに自我をもたず自分の意志表示をしなくてだいじょうぶかな」と思いました。そこに、学校の「公共」の授業で考えたSNSの被害が結びつきました。

 

今、闇バイトなど、顔の見えない相手をよく考えず言われるまま信用して騙されるという被害が問題になっていますよね。自我がないと都合の良いように扱われて、不利益を被ることがありますし、周囲の人にも迷惑がかかることがあると考えました。

 

―SNS被害のようなテーマは、調べて意見をまとめ、論文にしたり発表したりするケースもあると思いますが、ラジオドラマにするのとどこが異なると思いますか。

 

論文は興味のある人しか読まないけれど、ラジオドラマはあくまでドラマの要素がメインなので、普段テーマに関することを考えない人にも私の考え方を伝えられると思います。

 

 

思いを伝えるために何度も書き直して台本を完成

スマホを使って自宅で録音し、仕上げは放送室で

 

―作品はどのようにして制作しましたか。工夫したことや苦労したことはありますか。

 

大会の規定の8分間に収めるのに苦労しました。じっとりとした怖さが伝わる作品にするため間を大切にしていたのですが、短い時間に収めなければならないのでセリフや場面をやむを得ず切ることが多かったです。4、5回書き直して台本を完成させました。

 

レコーディングはほとんど自宅でスマホを使って行い、叫ぶシーンは放送室で録音しました。工夫したのはBGMや効果音です。ずっと課題だったので、より自然になるように規定のBGMを複数重ね合わせて環境音を作りました。録音と同時に編集をして時間短縮し、なんとか期日前に完成させました。

 

放送室での録音風景
放送室での録音風景

―最後に、高校卒業後大学で学びたいことや、将来の夢を教えてください。

 

文章を読んだり書いたりするのが好きなので、大学では日本文学について学びたいです。文学を通して色々な人の意見に触れ、柔軟な発想と広い視野を身につけたいと思っています。将来は大学で学んだことを活かして、生徒一人一人の意見を受け止めて向き合う国語の先生になりたいです。

 

―将来が楽しみですね。大学でのご活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

 

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