総文祭「新聞部門」の入賞常連校
「地域に根ざした活動」を理念に、写真や探究的な活動にも挑戦
静岡県立韮山高校2年 写真報道探究部 部長 中島怜さん
2024年度全国総合文化祭の優秀賞に輝くなど入賞の常連校として知られる静岡県立韮山高校の写真報道探究部。新聞制作だけでなく写真班による作品制作、プロジェクトごとに有志を募って行う探究的な活動に取り組んでいるのも特徴です。
(2025年1月取材)

学内の話題の速報が中心の『龍城学報』
学校や地域のテーマを扱う『韮高新聞』
―写真報道探究部ではどんな活動を行っていますか。
新聞は2紙を発行し、A4判の『龍城学報』を年に約60回、タブロイド紙の『韮高新聞』を年3回発行しています。
『龍城学報』は、校内の話題を中心に速報性を重視して報道しています。『韮高新聞』では地域のトピックを中心に、校内の大きな行事や、生徒をとりまく興味深い事柄を取り上げています。
さらに、地域の三島信用金庫が発行するミニコミ紙の『まち・ひと・しごと新聞』で、地元企業を取材して、記事を書いています。
部の中に写真班があるのが特徴で、主に記事の写真を撮影しています。また、『龍城学報』に「ワンフォト」というコーナーをもって、作品を掲載しています。昨年は乗り物の写真、今年は植物の写真がトレンドですね。新聞とは別に、「写真甲子園」など、写真コンクールにも出品しています。
―部員は何人で、どのように活動しているのですか。
現在、部員は1年生14人、2年生9人です。3年生は文化祭後に引退なのですが、18人います。活動は、部室もあるのですが主にパソコン教室で行っています。ここで、企画会議をしたり、パソコンで原稿を書いたり、新聞の割り付けをしたりしています。活動日は平日の放課後5日間です。毎号、2〜3人一組で制作を担当し、常に何号分かが並行して動いています。
伊豆半島地震に関する特集では、
被災した能登の高校生の声も掲載
―新聞記事の例や、編集方針を教えてください。
『龍城学報』は、学校行事や部活動の速報記事のほかに、各部員が書きたいテーマを編集会議に提案しています。
例えば校内にある本校の学祖・江川坦庵公の銅像の碑文の謎に迫った記事、学校で水道トラブルが起きた時に、その原因と現状をまとめた記事などがあります。出来事をただ伝えるのではなく、自分たちなりに突き詰めて記事にしています。
―『韮高新聞』はいかがですか。
高校生も地域の一員であるという考えから、「地域に根ざした活動」を理念に掲げています。編集方針は、『韮高新聞』で取り上げる意義や、読者である韮高生が興味をもってくれる切り口を心がけています。
たとえば最近2号にわたり、伊豆半島地震に関する特集を組みました。特集では、伊豆半島の危険箇所や市の取り組み、韮高の防災設備、高校生にできること、などの記事を掲載しました。能登地震で被災した能登の高校生の声も掲載しました。
―「地域」という視点では、ほかにどんな記事がありましたか。
私が書いたものとしては、たとえば昨年11月、伊豆の国市の「灯そう2024 江川邸の庭へ」という竹灯籠のイベントに韮高生が関わったという記事があります。過去には、伊豆の国市で反射炉の壁を漆喰で白く塗ってしまうという話が持ち上がった際に、その是非を問う記事を出したこともあります。
―問題提起することも意識しているのですか。
「オピニオンリーダーになる」というのも部の理念の1つです。これも昔の話ですが、韮高のごみの捨て方に対する問題提起の記事を出したことで状況が改善されたことがあったそうです。全国紙であれば「日本を動かす」になると思いますが、私たちは「韮高や地域をよい方向に動かす」「韮高生の意識を変える」きっかけを作れたらいいですね。部説とコラムがあるので、そこでも自分たちの意見を伝えています。

「探究」活動として、地域活性化の提案や
探究関係のコンテストにも応募
―部の名称が写真報道探究部ですが、「探究」は何をしているのでしょうか。
記事作成にともなう取材や調査に探究的な活動の要素が含まれることもあり、「探究」も部の活動の一部です。活動ごとに部内で有志を募って取り組んでいます。
現在は、静岡県東部地域の官民各界の方が地域の活性化について考える懇話会「サンフロント21」の企画に参加しています。静岡新聞から、県内の高校の新聞部に「東部地域の活性化をテーマにした紙面制作」という依頼があり、この企画に手を挙げたメンバーが「廃校になった小中学校の活用」をテーマに取り組んでいるところです。
もう1つ、NPO法人しずおか共育ネット主催の「Shizuoka Tankyu Collection」に応募して、2月11日に開催される大会での発表に向けて準備しています。現在メンバーが、だるま落としなどの昔の遊びの今の時代へのリメイクを考えています。

―中島さんご自身が活動を通じて、印象に残っていること、勉強になったことはありますか。
韮高150周年のときに、卒業生を取材して、活躍の様子を記事にしたのですが、その中に、映画監督の田中さくらさんがいらっしゃいました。田中さんは、「映画は音楽、動画、演技などの総合芸術」といったことをおっしゃっていたのですが、映画という芸術作品に真摯に向き合い、取り組む情熱に感銘を受けました。
また、先生や、取材先で大人の方と関わることが多いので、視野が広がり、多様な気づきを得られるのは、ほかの部活ではなかなか体験できないことだと思います。
―最後に、中島さんの将来の夢を教えていただけますか。
趣味がエレキギターを弾くことなので、電子工学に進むつもりです。工学の分野は「協力してものを創り上げることの面白さ」が、写真報道探究部の活動と共通すると思います。
―ありがとうございました。中島さんはじめ部員の皆さんのますますのご活躍を期待しています!