かがわ総文祭
郷土芸能 伝承芸能部門
江戸時代の朝鮮通信使をはじめ、古代から現代の韓日の交流を舞台に
白頭学院建国高等学校(大阪府)
伝統芸術部 2年 朴泰ユン(ぱく てゆん)さん
演目:「夢舞〜朝鮮通信使より〜」
(2025年7月取材)
    
江戸時代の大行列の再現から“現代の朝鮮通信使”として明るく壮大に演技
―今回の演目について教えてください。
「夢舞~朝鮮通信使より~」は、韓国の朝鮮通信使を題材とした作品です。百済から渡来した王仁博士が伝えたとされる「難波津の歌」は、日本最古の勅撰和歌集『古今和歌集』の冒頭を飾り、その精神は後に朝鮮通信使へと受け継がれました。
朝鮮通信使は江戸時代に12回派遣され、500名を超える大行列を組んで下関から江戸へと進み、外交と文化交流を担いました。その足跡は岡山県牛窓町や三重県鈴鹿市に伝わる唐人踊りなどに残されています。この作品では、通信使の大行列と、行列の成功を祈る祈祷を表現します。五色の旗を振って神に祈りを捧げ、様々な楽器の響きが大気を揺らします。悠久の時を超え、古と現を結ぶ新たな道が現れ、時を切り開き、現代の私たちに朝鮮通信使の思いが繋がる所を表現しています。
―演目の見どころを教えてください。
朝鮮通信使の大行列を舞台の上で表現しているところです。舞台上に500人の通信使が立っているかのような演出は圧巻です。行進のあとは、爆発的で力強い五色の旗の演技が見どころです。この場面では踊りだけでなく、踊りに合わせた伴奏にも注目してほしいです。
昔の朝鮮通信使の行進の場面が終わり、口上の場面で力みなぎる声が会場を包み込むと、獅子とともに現代の朝鮮通信使としての演技が始まります。この場面では重い雰囲気から一変して、明るく壮大な雰囲気になるように工夫しています。
    
魅力は、日本では滅多に見られない韓国伝統芸能の踊りや技
―どんな練習をしてきましたか。
今回の演目は今年の4月頃から練習を始めました! 実は16人中、高1の1人と高2の4人は今年から入部したメンバーです。5人が本格的に大会の練習を始めたのは6月くらいで、初めてのことだらけなのにも関わらず、大会では元からの部員との差がないほどに演じてくれたので感謝しかなかったです!
この作品は2年前にも大会で披露していて、その時は部員が足りず中学生も加わって、参加部門として大会に望みました。僕らの練習は2年前の作品を再現するところから始まりました。そして、コーチや監督の手厚いご指導と、改良を重ねて今回の作品を作っていきました。作品が完成した後は、慣れない衣装を着ての通し練習や、場面ごとの練習、そして細かい修正などの練習をしていきました。
―特に苦労したことはありますか。
最初の場面での難波津の歌が難しかったです。本格的に歌を入れた舞台は今のメンバーでは初めてです。歌の音程を合わせるのも難しかったですが、声と笛の合うところを探すのに苦戦しました。お互いの苦手なところをカバーしあい、音楽の完成度を上げていきました。
他にも、行進での旗の動きを六人で合わせることが上手くいかなかったです。何回も動画を取って見直し、皆で約束事を決めて、全員が全員に合わせることに集中し続けました。皆が全体を考慮してより良い作品になるよう努めました。
―皆さんの演技のいちばんの魅力はどこにあると思いますか。
私たちの演技の一番の魅力は、日本では滅多に見られないような、韓国伝統芸能の踊りや技、そして文化に触れることができるところだと思います。もう一つの魅力として「気迫」があると思います。演技する中でみんなが韓国語の掛け声を言い合い、笑顔で力強く踊る場面には計り知れない気迫と魅力があると思います。そして私たちの演技を通して観客席のお客さんたちまで巻き込んで楽しめるところも魅力の一つだと思います!
    
大阪万博などの大舞台や韓国の芸術祭での招待公演も
―普段の活動を教えてください。
私たちは公演を通じて、日本の方々に韓国との深い繋がりを感じとっていただき、韓国と日本、そしてアジアをつなぐ架け橋となれるよう日々努めています。定期公演の開催や、他校との交流を始め、地域の人々との交流などを積極的に行っています。近年では、韓国を代表する民俗芸術が一堂に会し、その真髄を競う「韓国民俗芸術祭」に招待され、公演の機会をいただきました。
また、大阪万博での公演やSUPERPOP JAPAN2024など大きい舞台にも出演し、さらに11月に開催される、古代日本と韓国の国際交流を再現する祭典「四天王寺ワッソ」にも毎年出演しています。
―これから、どんなことにチャレンジしたいですか。
伝統芸術部は、先輩から後輩へと、伝統を後世まで受け継いでいけるように努力しています。卒業して韓国の芸術大学で活動を続ける人もいますが、だいたいは伝統芸能を演じる機会はほとんどなくなってしまいます。ですが定期公演などでは卒業生も集まって全員で演技をします。これからは定期公演に向けて新しい作品にチャレンジしたいと思います!
総文祭本番後、韓国と沖縄の文化交流に喜びと感動
―総文祭の舞台に立った感想を教えてください。
総文祭の舞台で韓国伝統芸能を披露できたことに誇りと感謝を感じました。皆笑顔で声を出し、顔を合わせながら行った後半部分の演技は今までで一番楽しかったです。作品の最後、韓国の代表的な民謡である、アリランを歌う場面では、楽しい気持ちとともに僕らの夏、総文祭が終わってしまうことにどこか寂しさも感じました。そして最後の幕が閉まるときには自然と涙がこぼれました。
本番が終わって僕が楽しかったのは沖縄県代表の八重山高校さんとの交流でした。韓国と沖縄の文化が交えることが嬉しいし、感動しました。かがわ総文祭は笑いあり、感動あり、そして多くの学びがあった貴重な体験でした。今回の学びを糧に更に精進したいと思います!
    



    
    

