学問・大学選び支援サイト

デザインパテントコンテスト 優秀賞

スプレー缶用回転式ノズルの開発を通じて、アイデアを「どう守るか」を学んだ

旭川工業高等専門学校

架田琉稀(はさだ りゅうき)さん(5年)

 

◇部活での参加(発明研究会)

◇作品タイトル「スプレー缶用回転式ノズル」

 

◆応募したデザインの内容を、具体的に教えてください。

 

本作品は、スプレー缶の先端に取り付けて使用するスプレー缶用回転式ノズルです。一言で言えば、スプレー缶でありながら、エアブラシのように噴射特性を切り替えられる製品です。

 

図1のようにスプレー缶の先端に装着し、本体に配置された5種類のノズルを切り替えることで、塗装の幅や噴射量を用途に応じて変更できる構造になっています。

 


 

図2が表側、図3が裏側で、裏面にある持ち手部分のスライドリングを回転させることで、表側のノズル位置を切り替えます。これにより、ノズル自体を付け替える必要がなく、片手で直感的に操作できる点が特徴です。

 


 

図4から図8は、各ノズル部分の拡大図で、それぞれ異なるノズル径を持つ5種類の噴射口が配置されています。これにより、細かい塗装から広範囲の塗装まで、多様な用途に対応できます。

 

 

また、図9は断面図で、各部品を色分けして構造を示しています。内部構造を明確にすることで、操作性と機構の理解がしやすいよう工夫しました。

 


◆デザインのアイデアを思いついたきっかけを教えてください。

 

模型製作などの用途で塗装用エアブラシの購入を検討したことがきっかけです。

 

塗装用のエアブラシは高額だったため、あきらめてスプレー缶で塗装しようと思っていたのですが、エアブラシはノズルの先端を交換できますが、スプレー缶のノズルは初めから付いているもの以外に選択肢がなくて不便に感じたところが始まりでした。

 

そこで、「スプレー缶でもノズルを切り替えられたら便利ではないか」と考え、まず必要な噴射特性を検討し、5種類のノズル径に絞りました。そして、ノズルを一つずつ交換する方式では手間がかかるため、ノズルを円形に配置した回転体とし、スライド操作のみで切り替えられる構造を着想しました。

 

 

◆コンテストに出場した経緯を教えてください。

 

私は学校の課外活動の一環として「発明研究会」に所属しており、その活動を通じてパテントコンテストおよびデザインパテントコンテストに出場しました。

 

発明研究会では、自身のアイデアを単なる思いつきで終わらせるのではなく、実際に形にして、特許庁に特許や意匠の出願をすることで、知的財産権として保護することを目的としています。そのため、アイデアの着想から設計、試作、そして特許・意匠としての権利化までを一連の流れとして学ぶことができます。

 

こうした活動の延長線上に、実際に特許権や意匠権の取得を目指すことができるパテントコンテストやデザインパテントコンテストがあり、これらのコンテストに参加することが、自分の取り組みを社会的に評価していただける貴重な機会だと考え、出場を決めました。

 

 

◆制作は、いつ頃から始めて、どのくらい時間をかけましたか。

 

制作はコンテストの約1か月前から開始しました。最初の1週間で、自分の中にあったアイデアや課題を洗い出し、それらを整理・ブラッシュアップしました。次の2週間で、Fusion 360を用いてアイデアを三次元モデルとして具体化し、最後の1週間で提出用資料にまとめ、添削を経て完成させました。

 

特に大変だったのは、「アイデアとして成立しているもの」を「図面として第三者に正確に伝わる形」に落とし込む作業でした。機構の説明や寸法関係を整理し、誰が見ても理解できる表現になるよう何度も修正を重ねました。

 

 

◆選考に通ってから特許庁への意匠登録出願までに、どのようなことをしましたか。

 

入賞後、弁理士の先生と学校で直接面談し、作品内容を改めて説明しました。そしてその場で、「意匠に係る物品」、「意匠に係る物品の説明」、「意匠の説明」といった出願書類の骨子を約2時間で決定し、続く2時間で出願に必要な図面の作成に取りかかりました。

 

その後の出願手続きは弁理士の先生に進めていただき、拒絶理由通知を受けることなく、出願から早期審査を経て約3か月で権利化されました。

 

 

◆出願までに、大変だったことを教えてください。

 

最も苦労したのは、コンテスト提出用の資料を「意匠出願に適した形」に修正する作業です。提出資料では視認性向上のため作品に着色していましたが、そのまま出願すると、色のみを変更した模倣を許してしまう可能性があります。そのため、図面を白黒のワイヤーフレームに修正し、意匠出願としての適切な表現に変更しました。また、断面図や参考図の配置順、必要な形状の取捨選択なども調整しました。 

 

 

◆弁理士の先生からはどのようなことを学びましたか。

 

応募資料を出願書類に落とし込む際、「意匠に係る物品」、「意匠に係る物品の説明」、「意匠の説明」に何を書くかで、権利範囲の大部分が決まると教えていただきました。

 

意匠には意匠に適した文章、特許には特許に適した文章があり、その違いを理解した上で表現を工夫する重要性を学びました。文章一つで権利の範囲が変わるという指摘に、専門家としての弁理士の知見の深さを強く感じました。

 

 

◆知財権について、どのような学習をしましたか。

 

知的財産管理技能検定3級の「スピードテキスト」「学科・実技のスピード問題集」を用いて、要点を絞った学習を行いました。所属する発明研究会には多くの知財関連書籍がありますが、その中でも図が多く、最も理解しやすい教材としてこれらを選びました。

 

知的財産の学習は、学校での教科学習と比べて実社会との距離が非常に近く、日常のニュースとも強く結びついている点が特徴だと感じています。

 

 

◆意匠権を今後どのように発展させたいですか。

 

私は、意匠権を取得しましたが、このまま活用せずに終わらせるのは非常にもったいないと考えています。そのため、スプレー缶関連の企業に本意匠の存在を伝え、可能であれば実際に使用していただける形につなげたいと思っています。コンテストにて特許権や意匠権を取得した後、実際にその権利を活用している人はなかなかいないと思います。そこで私は、自身の発明をより多くの人に知ってもらい、この取得した意匠を生かしてみたいです。

 

実は、26年度も後輩と一緒にデザインパテントコンテストに「壁掛け時計」として応募し優秀賞をいただきました。意匠権の登録申請もできることになりました。その制作は、後輩のアイデアを私が形にしたものですが、「形にする作業」をより効率的に、かつ効果的に進められることができたのではないかと感じています。また、「こうすれば高く評価されるのではないか」という感覚も掴めるようになってきていたのですが、26年度の入選で、その感覚がさらに強くなりました。こちらも意匠権を取り生かしてみたいです。

 


  

◆今回の経験がきっかけとなり、将来進みたい分野や夢が具体的に見つかりましたか。

 

私はやはり、ものづくりが本当に好きで、自分のアイデアを形にすることが得意だと気づいたので、自分でプロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングなどで融資を募るやり方で形にして、社会に貢献したいと思いました。

 

その中で非常に重要となってくるのが知的財産権への理解だと考えています。自分のアイデアを模倣されることは、ものづくりに関してもっとも致命的なので、自分の発想のコアとなるところは特許権、実用新案権、または意匠権でしっかりと保護をしていきたいと思います。

 

例を挙げると、LEGOブロックのケースがそれに近いと思っています。レゴの基本的なブロックの特許権は1980年代後半から1990年代後半にかけ順次期限切れとなり、その結果、多くの互換性のある商品(いわゆる「コピー商品」や「クローンブランド」)が市場に出回るようになり大打撃を受けました。このことが、まさに知的財産の重要性を物語っていると思います。

 

今後は、高専で、さらに2年学べる専攻科へ進学する予定です。そこでは、発明研究会の後進の育成に励みたいと考えています。そして将来は、やはりものづくり関連の分野の仕事につきたいと思います。高専に5年間在籍して、自分は学者向きではないと気付かされました(笑)。

 

 

 ◆今回の体験を通して、より深く学んだこと、得られた知識はありますか。

 

今回の体験を通して、自分が以前より得意になったと感じているのは、アイデアを思いついたときに「それをどう守るべきか」を考えることです。

 

特許で守るのか、実用新案が適しているのか、あるいは意匠として保護するほうがよいのか、場合によっては商標も取っておいたほうがよいのかなど、アイデアの内容に応じて判断できるようになってきたと思います。そのため、発明研究会の後輩から相談を受けた際にも、「まず何を守りたいのか」「どこがアイデアの核なのか」という視点で、具体的なアドバイスができるようになったと思います。

 

また、今回身につけた知識はこれまでの学校での学びとは大きく異なり、「実際に自分が当事者として経験した」という点が印象に残っています。授業で学ぶ内容は、自分の生活や将来と直接結びつかないことも多く、どうしても受け身になりがちでした。しかし、意匠権の取得については、出願から登録までを実際に経験しながら学んだため、知識が自然に頭に残りました。

 

学んだ内容が「使う知識」として自分の中に定着し、今学んでいることが現実の権利化とつながっていると強く感じられたことは、人生観を変えるような大きな体験でした。

 

★他の高校生たちの挑戦も読んでみよう!

未来を拓く新時代のアイデアバトル、挑戦した高校生たちのストーリー

 

発想を形にするプロセスを体験してみよう!

ゲームやワークで楽しく学べる!『発明入門』開催 みらい探究プログラム K-SHIP 3月28日(土) 

知的財産の基礎やアイデアの広げ方が、ワークやクイズで楽しく体験できます。「発明って、実は身近でワクワクするものなんだ!」と気づける、創造の第一歩を学ぶ講座です。

 

Copyrights © Kawaijuku Educational Institution All Rights Reserved.