第87回情報処理学会全国大会 第7回中高生情報学研究コンテスト
低重心のシャープペンシルは書きやすいのか、モーショントラッキングで確かめた
広島大学附属高等学校
尾原佳奈さん(2年生)
(2025年3月取材)
Blenderによる「書きやすい」筆記具の分析
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◆今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。
私は文房具が大好きで、特に重心が低いシャープペンシルを好んで使っています。文房具屋さんでも、低重心であることを売りにした商品を目にする機会が多いと思います。市場でも人気があるということは、筆記具の重心が筆記動作に何らかの影響を与え、それが「書きやすさ」につながっているのではないかと考えました。
しかし、動きの分析について先行研究を調べてみたところ、高校生にとって馴染みのない機械が使われていました。そこで、私自身何度か使ったことがあり、かつ無料ソフトであるBlenderに着目し、先行研究にはない、高校生でも取り組みやすい新しい方法を見つけるということもテーマの一つとしました。
◆今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。
「筆記具の重心とBlender」というテーマを思いついたのが10月のはじめごろです。10月中に予備実験を終わらせ、11月に入ってから本実験を行いました。
◆今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。
今回の研究は部活動や授業の一環ではなかったこと、そして10月から取り組み始めたということもあり、学業と両立させるのが大変でした。
また、「難しいもの」は使わないということを一つのテーマとして取り組んだので、想像していたよりも地道な作業が多くなってしまいました。その結果、十分な量のデータを集めることができず悔しかったです。私自身、プログラミングに関しては情報の授業で習ったこと以上の知識がなく、Pythonでさえ「難しいもの」に含まれているため、もっと効率よくできる部分もあっただろうなと思います。
◆「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。
筆記時の映像から、筆跡の再現に成功したところです。Blenderで動きの分析ができないとなると、研究自体練り直すことになるので、文字が現れたときにはとても安心したし、自分が思い描いていた結果が実現して感動しました。
また、「難しいもの」を使わなかったことは、独自性・新規性という観点において強みになったのではないかと思います。今回私が使ったものは、鉛筆、針金、コピー用紙、三脚、スマートフォン、ノートパソコンのみです。また、ソフト面でもBlender、Excel、WebPlotDigitizerと無料のものしか使っていません。もちろん、たくさんのデータを分析するという目的のもとでは、効率が悪いのかもしれません。しかし、この方法は、高校での探究活動や実験といった場面に役立つ新しいものではないでしょうか。
◆今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。
今回たくさんの先生方とのお話を通じて、私の研究で成果を出すことができれば、一般に向けてビジネスとして活かせるのではないかと思いました。
実用化の形としては、ユーザーが撮影した筆記時の映像から、個人の書き方の癖を見つけ、おすすめの商品を出力するというサービスを想定しています。そのためにはまず、より効率的な方法でデータを収集し分析することが必要になると思います。
今回、私の好きな文房具をテーマにしたように、将来は人をわくわくさせられるような情報システムを開発したいと考えています。
※尾原さんの発表は、中高生研究賞奨励賞・初等中等教育委員会 委員長賞を受賞しました。
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