第88回情報処理学会全国大会 第8回中高生情報学研究コンテスト
恐竜はどう歩いた? 機械学習が実現する最新の行動シミュレーション
静岡県立浜松北高等学校
チーム名:静岡県立浜松北高等学校物理化学部
メンバー名:田中宏征さん(2年生)
(2026年3月取材)
3DゲームエンジンとPyTorchを使用したRLによる恐竜の歩行学習
恐竜の歩き方を推定する際、これまでは特定の部位の動きや足跡化石による分析が主流でした。この研究では、全身のリアルな3Dモデルと強化学習という機械学習アルゴリズムを用いて、恐竜に「自ら歩き方を試行錯誤」させる新手法を開発しました。あらかじめ好ましい動きを指定せず、アルゴリズムが最適な動かし方を学習することで、生物としてより自然な再現手法を確立し、将来的には足跡の付き方の分析への応用を目指しています。
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◆今回発表した研究を始めた理由や経緯を教えてください。
私は中学生のとき、学校の一角にある小さな森を題材に理数クラブで都市緑地の研究をしていたのですが、当時から恐竜が好きだったので、恐竜の研究を個人でしたいと思っていました。とはいえ、自分で化石を発掘し、クリーニングして標本を作ってそれを題材に研究をするとなると、中高生のうちに研究できるようなテーマではありません。そこで、ヒト型二足歩行ロボットや四脚ロボットの歩行パターンを生成するシミュレーション手法として強化学習の存在を知り、これを恐竜のモデルに応用すれば恐竜の研究になるのでは?と思ったのがこの研究を始めた経緯です。
◆今回の研究にかかった時間はどのくらいですか。
研究自体をスタートさせたのは中学3年生の夏でした。そこから3年かけて、ようやく成果が出てくるようになりました。中学3年生のときは同時にグループ研究も抱えていたので、あまり個人研究には集中できていなかったのですが、高校1年生の夏からは静岡大学FSSに参加し、情報学部情報工学科の青木・加瀬研究室に、2025年6月の成果発表まで研究にご協力いただきました。
◆今回の研究ではどんなことに苦労しましたか。
3D仮想環境で強化学習を行うにあたって使用したUnityの機械学習フレームワークML-Agentsは、公式ドキュメントが非常に少なかった上、私もエンジニアではなく、恐竜研究がしたいだけの高校生に過ぎないので、生成AIの精度が向上するまでは、コーディングやバグ修正は非常に大変でした。
◆「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点を教えてください。
3D仮想環境と強化学習のための機械学習ライブラリは、すべて無料で利用可能なUnity、PyTorch、ML-Agentsを使用しています。また、シミュレーションは一般的な家庭用ノートPCで実行しています。やりたい人がいるかは別として、やろうと思えばどなたでもシミュレーションを実行可能です。
ただし、デスクトップと比較してノートPCではバッテリー面の不安が大きい上に、Unityが標準搭載する物理エンジンPhysXはNVIDIAグラフィックボードでないとGPU処理ができないため、一般的な家庭用ノートPCで実行すると、処理が重くなって学習に時間がかかるのが難点です。
◆今後「こんなものを作ってみたい!」「こんな研究をしてみたい」と思うことがあれば教えてください。
恐竜の機能形態学分野においては、化石からの限られた情報や特定身体部位を対象とした有限要素法解析から恐竜の身体部位の使い方や行動が研究されてきました。この研究では、限られたパラメータのみで0から歩行周期を生成する汎用行動シミュレーションを構築し、今までより多くの、また広い視点から恐竜の行動について研究できるシステムにすることを目指しています。
今までは特定部位だけを切り出したシミュレーションしかできませんでしたが、この手法であれば脚の使い方だけではなく、体の捻り方や尾の使い方など、様々な部位のはたらきを一度にシミュレーションすることが可能だと考えています。今後はベースとなるシステムの改良とヒクイドリなどの現生動物を対象とした比較実験、さらには流体シミュレーションを用いて擬似的に足跡を形成し、実際に見つかっている足跡化石との照合を行う応用的な使い方の検討など、目標を実現するためにこれからも継続して研究開発を進めていきます。
※田中さんの研究は、中高生研究賞奨励賞・初等中等教育委員会 委員長賞を受賞しました。
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